芭蕉林通信(ブログ)

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2016年04月25日 大地震発生から10日間

 未だ余震収まらず、いつまで続くかと不安な日々を過ごしてきました。本震の後には一週間程度の余震に注意すれば良いとの希望的観測は無惨にも破られてしまいました。この落胆と憤りを誰に向ける事もできず、ただひたすら余震に耐え、希望を失わない様に心を奮い立たせています。  過去に例がない地震という気象庁や地震学者の説明は私たちの不安を一層募らせていますが、一人一人あるいは企業各社はそれぞれが受けた苦難を乗り切ろうと立ち上がっています。実は今朝も震度4の地震があり、いい加減にしてくれとうんざりする一方で、耐震力というより神経が麻痺している感覚に陥っています。震度1以上が800回を越えたのですから、揺れに対して鈍感力が養われたのでしょうか。

 今回の地震で一番被害が大きかったのは益城町と南阿蘇村ですが、実は熊本市の西部に位置する熊本駅近辺でも古い家屋が全壊したり立ち入り禁止の赤い札が貼られたりしている家が数多くあります。城下町の一画でもあるこの地域にはお寺が集中しており、歴史あるお寺は建物が古いだけに被害は甚大です。この写真は熊本駅から歩いて15分ほどのお寺の楼門ですが、崩れた楼門に挟まった車を見ると車に乗っていた人に怪我はなかったかと心配になります。  周りの人と会話をしますと、身近な所でこれだけの被害が出ているにも関わらず、なぜか現実感がなく、夢を見ている気分だと異口同音に話します。私自身がその一人ですが、今回の地震が想定外であったのは当然としても、その規模と範囲の大きさに身体感覚が付いていってないのが原因です。このところ、過去に起こった阪神・淡路大震災や東日本大震災をしょっちゅう思い出します。過去を教訓にしたいとは思うのですが、当事者に体験を聞かない限り想像するだけでは限界があると分かりました。

 街を車で走行しますと、今日だけでも他県から災害普及の応援として駆けつけてくれた自衛隊、警察、ガス会社、水道局の車列とたびたびすれ違いました。県民でさへ毎晩自宅に寝る事ができない人が6万人を越えているというのに、こうして支援に入って来てくれた人たちはどこで寝て、どういう食事をしているのだろうかと心配になりました。そして、自然に頭が下がる思いがしました。

2016年04月19日 城が崩れた日

早朝、次の散文が頭に浮かびました。

「城が崩れた日」

地獄の釜が割れ
マグマが噴き出し
地上の活断層は揺れ動き
マグニチュード6.5
マグニチュード7.3の大地震

家は倒壊
車はひしゃげ
人は飛び出し逃げ惑い
橋は落下し
山は崩れ
地獄の悪魔は乱暴狼籍
乱痴気騒ぎ
やりたい放題

お城の石垣
崩れに崩れ
我らの誇り
我らの夢は
木っ端微塵

千年に一度の大地震
今この瞬間とは
到底思えず
夢まぼろしを
見てるかのよう

 しかし他の現実に目を向けると、熊本には今なお避難所で車の中で余震に怯えて暮らす人たちが数万人います。皆さんが一日でも早く元の生活に戻ることを夢見ています。  
私たちは力の限りを尽くし、本業の食品流通機能を復活させ、困っている全ての人に美味しい食製品を届ける使命を果たす覚悟です。情緒に頼るのは一時のこと、これからは復興のため社員一同力を合わせて、雄々しく挑戦するつもりでいますので是非見守っていてください。


2016年04月11日 出汁(だし)の秘密

 和食が世界無形文化遺産に登録されたせいか、和食の出汁に対して世界の料理人が注目しています。私も熊本の和食料理の達人から指導を受けて約1年が経ちますが、出汁がうまく取れればすぐに減塩食品になることを教えてもらいました。出汁は昆布とかつお、それに水と料理人の技術から作られます。朝つくる出汁、夜つくる出汁があり、お吸い物が美味しい店は間違いなく良い店だそうです。

 フランス料理のスープは一昼夜かかって作られるのに対して、和食の出汁は約20分で作る事ができるから随分と便利です。しかし、出汁を作る材料である昆布やカツオを作るのには大変な時間と労力がかけられていることに注目しなければなりません。かつて北海道の根室で昆布漁師の作業場を見ましたが、やっと凪いだ海に船を出して取ってきた昆布を一家総出で干場に一本一本丁寧に並べて干していました。鰹節の産地の一つは鹿児島県の枕崎ですが、カツオを整形し焼きまた薫製にするまでの手間は大変です。つまり、出汁取りの20分は物によっては数年にも及ぶ材料作りがあってからこそ可能なのです。

 そこでふと思い出したのは、民芸運動の中心人物で陶芸家だった浜田庄司さんのエピソードです。詳細は少し不確かですが概略以下のような会話があったようです。浜田さんが作品に釉薬を掛け流ししているのを見た客が、「先生がわずか20秒で作った作品が何十万円で売れるとは羨ましい限りです。」と言ったそうです。浜田さんは、「いやこれまでの修練に50年間かかっているから、いわば50年と20秒だよ。」と答えたのです。私は本当に素晴らしいやり取りだと思いました。  何事にも表面的には捉えることのできない、深い背景があることに気づかされます。出汁を作ること、一つの陶芸作品を作ること、これらのことを考える時、自分自身を省みるきっかけになれば良いと思いました。

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