芭蕉林通信(ブログ)

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2016年07月20日 三島由紀夫賞を読む

 三島由紀夫賞を受賞した「伯爵婦人」の著者蓮實重彦さんの記者会見は前代未聞のやりとりとなり相当に面白かった。80歳の蓮實さんは、記者会見で三島由紀夫賞を受賞したことについて「まったく喜んでいません。はた迷惑なことだと思っています。」と語った。けんもほろろの蓮實さんに記者達が終始たじろぎ、本人に「他に質問がないことを望みます。」とまで言われて顔色を失っていた。  そこまでの本ならばと俄然興味を覚え、さっそく本を購入し読んでみた。これまた驚天動地のストーリーで口をあんぐり開けたまま読了したのである。この本については市内の本屋で次のような目撃談がある。(これは本当にあった話)

 70歳を越えていると思われる老婦人が本屋の店員に話していた。 「こないだの本は本当に面白かったわ。」 「もう、エロエロばっかし。」 「次の本はないの?」

 確かに屁理屈を捏ねたごとき小説ではなく、登場人物に自由奔放に語らせ行動させているその破天荒さ。伯爵夫人の謎めいたキャラクター。 昔のエロ・グロ・ナンセンス路線とは言えないまでもかなり危ない、だからこそまた次も読みたいという癖になるような魅力を感じた。そして性に対するあっけらかんとした奇想天外な物語展開に最後まで読み止めることができなかったのである。  そして目下の悩みは、私がこの本はハチャメチャだけど面白いと言ったばかりに、娘(ちゃんと成人し子供もいる)が本を貸してくれと言っているのに対して、どう対応するかということである。少し刺激が強すぎないかなあ。

2016年07月11日 イギリスの一情景

  EU離脱を国民投票で決めたイギリスが揺れている。古代ギリシャで民主主義が生まれ、その時代は選挙権は限られた少数の都市住民だけの特権だったから、皆が集まり投票する直接民主制だったと学校で習った。それなのに、今なぜイギリスは人口の多い近代国家でありながら、直接民主制に近い国民投票を選んだのかよく分からない。少し前のスコットランド独立の国民投票でハラハラドキドキしたばかりではなかったか。
イギリスが無性に気になるのは6年前にイギリスをバスで巡る旅を企画したからである。 私はある経済団体の観光振興部会長をしていたので、約一週間の手作りのバス旅行を企画したら、7組の夫婦が参加してくれたのである。あまり知られていないことだが、実は夫婦参加の旅行は大変楽だ。大体において、夫は妻の前では大人しい。社会的に高い地位にある人でも、旅行中は借りてきた猫のように静かにして我が儘を言わないのは妻に怒られないように言動に注意するからである。

 本題からそれたが、バス旅行の良さは観光地を点として観るのではなく、線として観ることができることだ考えている。イギリスの直後に、フランス横断のバス旅行を企画したのも同じ趣旨からであった。  イギリスではスコットランドの中心都市エジンバラからスタートして、ひたすら南下しロンドンに至るルートを取った。もちろん途中では、ワーズワースが有名な水仙の詩を作った湖水地帯やシェークスピアの生家があるストラトフォード・アポン・エイボンなどに寄ったのである。バスの車窓から観るイギリスの国土は美しいの一言であった。日本に例えれば、北海道の雄大な景色が行けども行けども続くといった具合である。しかも酪農が盛んであり、大規模農業に転換しているので手入れの行き届いた牧草地が延々と続くのである。

 そうした時、バスの車窓から一瞬観た情景が忘れられない。カメラで写真を撮ることができないぐらい、ほんの一瞬、時間で言えば0.3秒ぐらいで観た映像が強い記憶として残っているのである。それは、乗馬クラブがある緑なす平原を通過している時、平原が尽き森が始まった場所に木漏れ日が見えて、小川に三匹の馬を引き入れている男がいたのである。その日の遠乗りで疲れた馬から鞍を下ろし、せせらぎの中で馬を憩わせている男の姿が0.3秒の間に目に焼きついたのであった。そこには、確かな平和、信頼、慰めがあったよう思う。
これからのイギリスにも平和や安らぎが続くように願っている。

2016年07月06日 囲碁盤

 茶道を学ぼうとして個人レッスンを受けたものの挫折してすでに10年が経っている。茶道が日本文化に寄与したとの思いと作法や道具の奥深さに魅了されたのだが、さすがに歯が立たなかった。そうした事情で今はその他の趣味に邁進しているが、茶道を産んだ日本文化に興味を無くしたことはなく、むしろ古典文学を含め日本文化に関心が高まっているのは加齢のせいかも知れないと思っている。 そんな事情もあり、年に数回は茶室に足を運んだりするので、地元の茶道の先生方と会う機会があることはある。どこの世界も同じで、個性豊かな先生が多いのは面白い。ただ青年部に属する人達ですら、50歳を越える人達が主力であるのは、現代の人口問題を反映しているようだ。

 ある梅雨の続く一日、茶道の先生のお一人の家に囲碁盤をいただきに参上した。先生とはもちろん女性だが、このM婦人との偶然の出会いが忘れられない。それは出雲大社に行き、妻と離れて出雲大社資料館に行った時のことである。そこでM婦人を見かけ声をかけたのであった。当然驚いた顔をされたのだが、その後に驚いたのはむしろ私の方で、M婦人の近くにいた見知らぬ若い美人がこんにちはと挨拶してきたのだ。その美人はM婦人の息子嫁であることが後で分かったが、丁寧で物怖じしない態度にまるで爽やかな一陣の風が吹いてきた心地がしたのである。

 M婦人のご自宅は典型的な日本家屋であるばかりか、普請道楽を思い出させるような無垢の良木をふんだんに使った気持ち良い家であった。茶室を案内されたが、三畳題目の茶室、多めの人数で茶会のできる茶室、立礼の部屋があるなど立派な家であった。M婦人の亡くなったご主人が囲碁5段であり、今は使う人のいなくなった碁盤を譲るという話があり家に伺ったのである。M婦人は碁盤の一番良い物を持って行くように言われたばかりか、立派な碁石も奥から探し出してくれたのである。 碁盤の重いのには閉口したが、良質だからこそ重いのだと自分に言い聞かせて我が家まで持ち帰った。そしてさっそく我が家で指した一局は、孫との五目並べであった。申し訳のないスタートとなったのである。

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