芭蕉林通信(ブログ)

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2019年12月25日 老後に大切なのは「きょうよう」と「きょういく」

 初めから種明かしをすれば、「きょうよう」とは教養ではなく「今日も用がある」という意味であり、「きょういく」とは教育ではなく「今日も行く所がある」という意味である。会社の定年を迎えたり所属していた組織から自由になると、人間は途端にすることがなくなり会う人がいなくなる。そうなると自宅に引きこもりがちになるが、それでは配偶者が困る。配偶者とて自分だけの時間が必要なのだが、暇になった御仁はつい配偶者にかまってもらいたいのである。わし族(わしも付いて行く)、濡れ落ち葉族(掃き出そうとしても家から出ない)の誕生である。

 だからこそ退職した老後には今日の用事と行き場所が必要という訳である。それは趣味にのめり込むことなのか、はたまたボランティア活動に従事するのか、改めて料理教室に通うのか、野菜作りに挑戦するのか、ゴルフやテニスで汗を流すのかなどいろいろと選択肢があろう。頭と身体を動かすことは健康寿命を延ばすために必要だ。

 ところで、今日ビッグデータの時代とは言うものの、具体性がなく理解できない人が多いのではないか。私もその一人だが、NHKで長生きの要因を探す番組は興味深く、ビッグデータの活用事例としては出色の出来だと思った。膨大なデータの中から導き出された長生き関連因子は「図書館」だった。図書館に通うと、歩く・探す・頭を使うということから長生きに繋がると言うのである。一見関係のないものから重要な関連を見つけ出すビッグデータに、思いがけず健康の秘訣を教えてもらった。確かに図書館は「きょうよう」と「きょういく」を充たしている。私の場合は、本屋・古書店巡りをこれからも続けようと思う。

2019年12月17日 褒めること批判すること

 今持って苦手なことは他人を褒めることである。細かい事にこだわる癖があるのかも知れない。また褒めることは難しくもある。褒めるには相手が喜ぶことを見つけ出し、過不足なく褒めなければならない。過剰であれば褒め殺しとなるし、褒める時は真剣にならなければ誠意は伝わらない。褒める極意は本人ではなく、第三者にその評価を伝えることである。直接褒められるよりは、第三者からあなたは褒められていたよと伝えられた方がさらに嬉しいものであり、自分の評価自体が広く伝わっていく感覚を得られる。

 一方他人を批判するのは、自分を一段上にした行為だけに気持ちが良い。しかし、他人の悪口を聞かされた人はまったく同感ならいざ知らず、そうでもないのであれば苦痛でしかない。批判するあなた自身はどうなのかと聞きたくもなろう。悪口を言う極意は、本人に直接言うことである。そうであれば、それはアドバイスとなり、諫言であり、本人のためになるからである。ある本に書いてあってなるほどと思わされたのは、他人を批判する時の覚悟である。それは、日本刀で自らの胸を突き刺し、背中から突き出た部分で他人を刺すぐらいの覚悟を持てと言うものだが、かくも自らに厳しくあらねばならないのかと驚いた。

 対馬に行った時に対馬の領主であった宗家の菩提寺をお参りしたことがある。墓域に行く階段の手前にあったが石造りの諫言太鼓であった(一種の象徴であろうが)。殿様に意見を言いたいことがあれば、この諫言太鼓を叩いて知らせなさいというもので、諫言太鼓が鳴らない限りは世は太平に治まっているということであった。古代中国の皇帝も傍(かたわら)に諫言の士を置き、常に自分の言動をチェックさせていたという。それこそ命がけの諫言をしていたのだろうが、これもまた古代中国の知恵と言って良いだろう。

2019年12月12日 電信柱

 現代社会では電信柱は厄介者である。景色が分断され見栄えが悪くなるばかりか、道路際に電信柱があると道幅が狭くなり通行しにくくなる。だから電信柱を地中化しようという動きが出てくるのは当然の成り行きだ。共同溝は電線のみならず、上下水道管や通信ケーブルまでも一緒に地中化する有力な手段である。

 それでも私が電信柱に惹かれるのはロマンがあり詩情を感じるからだ。高校の国語の教科書に載った電信柱の詩が好きなせいもある。電信柱を点検する工夫らが山を越えながら去って行くという内容の詩であるが、なぜか記憶に強く残っている。いつか全文を確かめてみたいと思う。

 そのせいか今でも胸がきゅんとするのは、阿蘇から熊本市内へ向かって帰る途中に広がる谷の景色である。今となっては活断層が作った谷とは分かっているが、美しいものはやはりどうしても美しい。緑の山に囲まれた谷はさらに緑が溢れ、赤白に塗られた高圧線の鉄塔が幾重にも連なって行く。そしてその景色を見る度に、いつも心の中で「我が故郷は緑なりき」と口ずさむのである。 (因に写真はこの谷ではなく、人吉にあるトトロの森のモデルの一つと言われる場所)

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