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私の趣味の一つは美術館巡りである。これまで海外や国内で直に名画鑑賞できたのは良い思い出だ。一時はピカソにはまり伝記や画集を集めたりした。そして何よりも代表作のいくつかを現地で見ることができたのは幸運だった。スペインのマドリードでは「ゲルニカ」を、パリでは青の時代、バラ色の時代、キュビズムの時代、新古典主義時代の作品群を、そしてニューヨークでは「アビ二ョンの娘たち」を目の前にして感激に胸が震えた。 ある時近くに住むパリ帰りの洋画家のアトリエを訪ねたことがある。随分歳上の先生は、絵は鑑賞するもので自ら描かない方が良いよとアドバイスをくれた。しかし今思えば、一枚の絵を完成させるのに先生本人が悪戦苦闘していたという当時の事情があったのだ。何しろ奥さんがこの1年1枚の絵も完成させてないと嘆いていたぐらいだから。 そうして時が移るに従い、私もいつしか水彩画やイラストなどを描くようになった。旺盛な創作意欲の賜物というよりは無聊を慰めると言った方が正しい。自動二輪車や自動車のメーカーであるホンダの創業者本田宗一郎さんが会社引退後に始めたのが油絵である。ある時取材した伝記作家城山三郎さんが「本田さん、油絵は楽しいですか?」と質問した。声を落として耳元で答えたのは「やっぱり仕事が一番だな」。私も趣味は社会的活動とのバランスがあってこそ楽しめると思っている。
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ここ数年は春と秋には必ずと言っていいほど風邪を引き医者にかかっていた。発熱し鼻水が出るので2〜3日は我慢するが、それでも治らない時は行きつけの耳鼻咽頭科の診療所に出向くのである。鼻から薬剤を吸入し飲み薬を調薬してもらい、約一週間ぐらいで体調は元に戻っていた。 ところがコロナ禍による怪我の功名か、外出時にマスクをし手洗いやうがいを頻繁にしているせいか昨年から風邪とは無縁で過ごしている。発熱してコロナ感染を疑がわれるのも嫌なので、普段から体が冷えないように注意深くしていることも風邪を引かぬ一因かもしれない。日頃から衛生環境に留意しておけば風邪を引かなくて済むと気付かされた。 かつてと言っても約20年ぐらい前、常日頃からマスク着用をしている友人がいて用心深い人だなと感心していたことがある。頭脳明晰の人だから衛生観念を強く持っていたのだろうと思っていた。ただ人生の不条理さを感じたのは、その人が若くして不慮の事故で亡くなったことである。用心深いだけでは生きていけないと知らされた。今やコロナウィルスは変異を繰り返し、人の運命、あるいは宿命に挑戦状を叩きつけている。風邪とは比較にならぬコロナウィルスの脅威にはひとときも気を緩めるわけにいかないと改めて身構えている。
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コロナ禍での大型連休が終わった。どこにも行けず家族以外とは誰とも会わない一週間だった。あまりにも暇なので、最後の日になると会社への出勤が楽しみになったぐらいである。若くて体が動く内に遠出をしようと考えて実行した、これまでの国内の旅・海外の旅が懐かしく思い出される。あの時に無理をしてでも行っておいて良かったと。 どこが一押しかと問われるならば、国内では琵琶湖周辺から熊野古道へのルートであろう。湖北・湖東を巡り、MIHOミュージアム、長谷寺、室生寺、高野山、熊野古道、熊野三山と日本の古層を探り堪能した旅。海外であれば、ピラミッドという巨大建造物とミイラが眠るエジプトが忘れ難い。ギザのピラミッド、ルクソールの神殿、ハトシェプスト葬祭殿、王家の谷、ナイル川の流れ、両岸に広がる耕地の緑などが目に焼き付いて離れない。 そしてアスワンにあるホテル「オールド・カタラクト・アスワン」の部屋こそが、私にとって世界で一番眺めの良い部屋であった。このホテルは1899年に英国人によって建てられたエキゾチックな雰囲気を持つラグジュアリーホテルであり、ミステリー作家であるアガサ・クリスティが宿泊し「ナイル殺人事件」を執筆した場所としても知られる。幸いにもパック旅行の宿泊先になったという幸運、そして宿泊したのが新築の「ニュー・カタラクト・アスワン」だったとはいえ、部屋からは素晴らしい眺めが悠久の時を経て眼前に広がっていたのである。ナイル川には帆を掲げたファルーカが浮かび、岸辺の砂漠には廃墟となった石積みが数多く見られた。乾いた空気は、地中海に注ぐナイル川が蛇行して流れる様を遠くまで見せていたのである。
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